ここのところ登山で遠征する週末が多く少々お疲れモード。
我が身を温泉で大いに労わってあげようじゃないか!
こういう時私が選びたいのは喧噪や賑やかさとは無縁のところ。
お湯とひたすら向き合いたい。心静かに。
自分の体に聞いてみますれば、ぬるゆで且つ個性が強すぎないお湯を求めているようで。
さてさて、何処へ…
私がせっせと情報を集めて作った「行きたい♨リスト」と照合してピーン!と来たるは霊泉寺温泉。
ご存知でしょうか?霊泉寺温泉。
私は長野に住んでいながら、温泉にハマるまで寡聞にして霊泉寺温泉の存在を全く知りませんでした。
長野県上田市にある霊泉寺温泉。上田といえば有名な別所温泉を思い浮かべる人が多いと思うけど…
その陰にこんな密やかで慎ましやかな温泉地があるとは。
昔からアンチメジャー気質の私。今回の目的に適うのも断然こっち!
というわけで今回は霊泉寺温泉・松屋旅館に投宿してきました。
春の気配が美しい霊泉寺温泉
意図したわけではありませんが、タイミング的に春爛漫の風情ある時期に訪れることができました。
国道254号を脇道にひょいと逸れて霊泉寺川沿いの一本道を進むと…
この写真を撮った時点では何とも思わなかったんだけど。
霊泉寺に泊まった後に振り返って思うことは、ここを境に時空を超える感覚があるってこと。
追々写真と拙文にて分かって頂けることを願う。
春の色に移り変わる頃合いの川岸が目に優しい。いい季節に来れたなぁ。
橋越しに見える小道が霊泉寺のメインストリート
メインストリートは200mもないくらいでしょうか?奥に行くほど時代を遡る感覚が…。
メインストリートに4軒の宿と共同浴場と霊泉寺の禅寺が慎ましやかに軒を連ねています。
土産物屋・娯楽施設・コンビニ・飲食店一切なし。
温泉の温泉による温泉の為の場所。なぜかリンカーン風だけど、つまり上質ってことです。
チェックイン時間近くの15時頃にはこの道で宿泊客らしき人を2人ほど見かけましたが、それ以外もうとにかく静か。
のんびり過ごすには好ましい環境です。私は好き。
温泉に求めるモノは人それぞれだろうけど、今回の私の目的には100%合致していてパーフェクト。
そして今回投宿した松屋旅館はこの道の一番奥に位置してます。
こんなとこだよ、松屋旅館
駐車場から松屋旅館を正面に臨む。
こういうのとか。
こういうのとかにすでにトキメイテおります。
宿泊客は看板のある玄関よりお邪魔します。
上の写真の建物1階に帳場(フロントではなく帳場と呼ぶにふさわしい雰囲気)と厨房、2階に客室。
一番新しいと思われる棟です。
その他にこの建物に垂直の方向で2つの棟が繋がっています。
こんな感じ↓
今写真見て気づいたけど手前の建物の方を散策した記憶なし。
そして奥の3階建ての建物は1~2階部分が客室、3階部分がお風呂になっています。
この日は私達含め5人の宿泊客(夕方散策がてら外に出る際に靴箱にあった靴でカウント)がいたようですが、私達は投宿日前日という直前の予約だった為か3階建ての古い建物の1Fの客室に案内されました。
1Fのフロアは私達だけしかおらず、トイレもそのフロアで貸し切り状態。コロナ禍の現在、過密さと無縁なのも良し。
お部屋の様子
9.5畳と広さも十分。古い建物の方の部屋だったけど、掃除も行き届いていて快適。
そして建物同様、調度品が非常にノスタルジー!
昭和50年代生まれの私には懐かしい。今はもう取り壊してしまったおじいちゃん・おばあちゃん家のあの雰囲気。
熊が鮭咥えてる木彫りの置物なんて、まさしくおじいちゃん・おばあちゃん家にあったやつだ。
あの頃の流行りなのか?
指入れて回して使う電話なんて姪っ子は使い方分からなそう。
そうそう、こういう意味不明で無駄に高そうな縁起物とかもあった、あった。
ほとんどの調度品は私より年上なんじゃないだろうか?
この部屋に何かこう安らぎを覚えるのは、おじいちゃん・おばあちゃん家の雰囲気があるからなのかもしれない。
部屋は中庭に面しており、眺めはいま一つ。
でも、よく見てみるとこんな年代物の鬼瓦部分を発見したり。
部屋を一通り愛でた後はお茶菓子で一服。
ちなみに部屋には最低限のものしかなく、アメニティーセットはこれだけ
浴衣・羽織・歯磨き粉付き歯ブラシとタオル。
タオルに至っては貸しタオルなのでキレイに洗濯はされていましたが、気になる人はMyタオル持参された方が良いかも。私はいつもの癖でMyタオル持参なので今回はなんとなくそれで。
あとティッシュも化粧水などの類もドライヤーもありません。
*ドライヤーは言えば貸してくれるようです
それから部屋に外カギはなく、内カギもこんな感じでレトロです。
映画シャイニングのジャックニコルソン演じる主人公が凶器持ってきたら一発でやられるレベル。
こういった情報は予約サイトの情報や口コミで前もって分かっていたし、登山で簡素な宿には慣れているので個人的には全く問題なし。
館内の様子
お部屋もさることながら、館内もノスタルジーで溢れています。
光があたって見えにくいけど、この柱時計のガラス部分に書かれている電話番号が今のものじゃない!
聞けば交換手を通じてやり取りする時代だった頃の電話番号だそう。
となりのトトロでさつきが使ってたあの電話か!
今調べたらトトロの時代設定は昭和30年初期とのことで、この柱時計もそれくらい昔のモノなのかも。
廊下に掛かっている数ある作品の中に切り絵で霊泉寺温泉の由来を表現したものを発見!
霊泉寺温泉のパンフレットにある由来を端折って説明すると
平維茂なる人物が山路で美女に会って酒盛り
↓
酔ってまどろんだ夢枕で白山大権現が表れて
↓
白山大権現曰く「今の女は戸隠山の鬼女」と告げる
↓
驚いた維茂が目を覚ますと、今や襲いかかろうとする鬼女が!
↓
戦いの末、鬼女を仕留めた維茂
↓
疲れ果てた維茂が世にも不思議な音に魅かれ近寄ってみると、そこはほとばしる温泉であった
↓
その温泉に浴して元気を回復した維茂が僧空海に銘じて霊泉寺を建立した
…と書いてあって、この切り絵は平維茂と鬼女の戦う様をモチーフにしたもの。
投宿した宿にこういう切り絵を献上する粋人になってみたい。
そんな芸術作品もありつつ、キッチュでレトロな工業製品も↓
ある一定以上の年代には懐かしいこの雰囲気。
つくられた昭和レトロじゃない、リアル昭和ここにあり。
極上のお湯
見どころが多い宿ですが、適当なところで切り上げて今回の目的である温泉へ。
温泉は建物の最上階3Fにあります。
向かって一番手前がお手洗い・二番目が男湯・一番奥が女湯という並び。
脱衣所の様子
むむっ?脱衣所のゴミ箱にもそこはかとなく昭和感。
ここ霊泉寺温泉には高い建物がなく、更にこの松屋旅館はメインストリート一番奥にあるので遮るものがなく太陽光が燦燦と降り注ぐ気持ちの良いお風呂!
そして眺め良し!
シャワーの水量はいま一つ!でも、それも事前に知っていたから心の準備は出来ているさ。
湯舟になみなみと注がれる源泉掛け流しのお湯。加水・循環・消毒なし。
入った瞬間に思わず感嘆の溜息が出てしまったよ。全細胞が喜んでいる!
個性が強すぎないし、肌あたりもマイルドで何より温度が私好み。
39℃いかないくらいで、ぬるすぎず・熱すぎずの絶妙の湯加減で毎日入っても飽きないお湯ってこういうのだろうな。
温泉分析表によると源泉38.5℃。女将さんに伺ったところ、この時期はまだ加温しているとのことでした。
温泉は夜10時~翌朝6時まではクローズ。
それでも滞在中計4回入湯して、極上のお湯を心行くまで楽しみました。
しかも女湯で誰かに会ったのは脱衣所ですれ違ったくらいで、湯舟は独泉。つまりずっと貸し切り状態で入れたわけで。こんなのを私は贅沢と呼ぶ。本当に良きお湯でした。
温泉の上にある屋上からの眺め。本当に山間にあるんだなぁ。
滋味深いご飯
お肉が苦手な私。肉肉しさがないご飯が決め手で松屋旅館を選んだわけです。正解でした!
夕ご飯はこの地域の名物、鯉こく。鯉の洗い。そしてアユの塩焼き、山菜の天ぷら、茶碗蒸し、自家製野沢菜漬け、イチジクのコンポート…お米も霊泉寺川沿いの田んぼで宿のご主人が丹精したものだそうで美味しくて完食です。
朝ごはん
野生のニラのみずみずしいお浸しとか、山芋と水菜のおみおつけだとか、何気なさそうに見えて素材の良さとか組み合わせをとても深く考えているものばかりで美味しかった!
朝の散策
朝ごはんの後は松屋旅館の向かいにある共同浴場へ
多分どこの宿に泊まってももらえるであろう共同浴場の無料利用券↓
見た目、公民館っぽい共同浴場。ポストがあるのが味わい深い。
気候も良いのでお散歩。
改めて今見ると映画のセットのような気がするくらい雰囲気ありすぎる霊泉寺。
振り返ってみて
松屋旅館は建物こそ古いけれど、お湯も最高だし、食事はおいしいし、接客も程よい感じだし(私が館内の墨絵などを興味深く見ていたら「この墨絵は常連さんが書いてくださって…こっちの切り絵はね…この時計はゼンマイ式で…」などと話しかけてくれたり、翌朝起きたら部屋の外に温かいお湯と新しい湯のみセットがおいてあったり)
何十年来の長いお付き合いになるお客さんが多いのも納得の松屋旅館でした。
チェックアウト時に田んぼでとれたお米をお土産に頂き、後日御礼の葉書が届いたのもなんだかじんわりと霊泉寺がリフレイン。
そしてこの霊泉寺温泉を包み込む懐かしい雰囲気もとても魅力的で。
フーテンの寅さんや、若大将が道端にいても全く違和感なし。
もしかして私、昭和にタイムスリップしてたんじゃなかろうか?と。
宿から帰った翌日会社でパソコン打ちつつ昭和⇔令和を一気に超えた思いがブワっと自分の中に広がって、すごいトリップ感にちょっと酔いました。
こういう感覚はすごく久しぶりで、また行ってしまう気がする霊泉寺。
いや、是非ともまた行きたい霊泉寺。となったのでした。
霊泉寺温泉の公式HPはこちら
コメントを残す